「女性天皇」と「女系天皇」の違い|女系天皇がダメな理由を徹底解説!

「女性天皇」と「女系天皇」の違い|女系天皇がダメな理由を徹底解説! 歴史ミステリー(その他)

「女性天皇」と「女系天皇」の違い

近年、「女性天皇」に関する話題が多いですよね。
現天皇の子供である愛子さまが女性であるため、「女性天皇」を認めるのかどうかという議論です。

そこで、「天皇は男性だけでなく、女性でもいいのでは?」という声も多いようですが、問題はそれほど簡単ではありません。
そこには「女性天皇」だけでなく「女系天皇」の問題もあるからです。

女性天皇?女系天皇?

「え? 女性天皇は知っているけれど、女系天皇って何?」
「女性天皇と女系天皇って同じ意味なのでは?」
と感じた方も多いと思いますが、「女系天皇」と「女性天皇」は全く異なる概念です。

そこでまず、「女系天皇」と「女性天皇」の違いについて説明しますね。

愛子さまが次の天皇になったら「男系」の「女性天皇」となる

まず「女性天皇」とは、読んで字の如く、女性の天皇ということです。
一方、「女系天皇」とは、皇位継承した先代の天皇が女性であった場合の皇位継承者のことです。
つまり、お母さんが天皇で、その子供たちが次の天皇になった場合「女系天皇」となります。

ちなみに、日本の歴史の中ではこれまでに「女性天皇」は実在しましたが、「女系天皇」は1人もいません。

女系天皇と男系天皇の違い

だから、愛子さまが次の天皇になった場合は「女性天皇」となりますが、先代の天皇(今の天皇)が男性なので「女系天皇」ではありません。
「男系」の「女性天皇」ということですね。

また、愛子さまが次の天皇になり、さらに将来、愛子さまの子供に皇位を継承した場合は、その子供が男性の場合は「女系」の「男性天皇」、女性の場合は「女系」の「女性天皇」となります。

そうなると、天皇は次の4つのパターンが生まれる可能性があるわけです。

①男系の男性天皇
②男系の女性天皇 ←愛子さま
③女系の男性天皇
④女系の女性天皇

ここで問題になってくるのが「皇室典範(こうしつてんぱん)=皇室に関する事項を定めた日本の法律」です。
現在の皇室典範では、その第1条に「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」と定められていますので、今のところ「②男系女性天皇」となる愛子さまには皇位継承権がないということになります。

「8人10代」の女性天皇たち

ただし、このルール(皇室典範)が決まったのは明治時代になってからです。
それ以前には「8人10代」の女性天皇がいました。(全て「②男系女性天皇)です)

歴代女性天皇一覧

「8人10代」とはどういう意味なのか?といいますと、皇極天皇(35代)と斉明天皇(37代)、孝謙天皇(46代)と称徳天皇(48代)は同一人物なので、「8人10代」ということです。
一番近いところでは、江戸時代にも女性天皇がいたんですね~。

ちなみに、歴史上の女性天皇たちは全員、皇室を継続させるための中継ぎ役として天皇となり、後の皇位を男系の男性天皇に引き継ぎました。
つまり、女性天皇が自分の子供に皇位を継承したことは一度もないということです。
だから、日本の歴史の中ではこれまでに「女性天皇」は実在しましたが、「女系天皇」は1人もいないのです。

「女性天皇」「女系天皇」の問題点とは?

それでは、一体誰が次の天皇にになるのか?といいますと、ルール上は「皇統に属する男系の男子」となっていますので、現時点で皇位継承権をもつ方は↓こちらの3名だけとなります。

秋篠宮(あきしののみや)さま…現天皇の弟
常陸宮(ひたちのみや)さま…前天皇の弟・現天皇の叔父
悠仁(ひさひと)さま…秋篠宮さまの長男

それでは、愛子さまが次の天皇になるためにはどうすればいいのか?といいますと、皇室典範を改正すればいいのですが、話はそれほど簡単なものではありません。

愛子さまが「女性天皇」になることは何も問題はありませんが、問題は愛子さまの子供です。
先ほども説明した通り、愛子さまが次の天皇になり、さらに将来、愛子さまの子供に皇位を継承した場合は、その子供が男性の場合は「女系」の「男性天皇」、女性の場合は「女系」の「女性天皇」ということになります。
つまり、ここで「男系」が途切れることになるのです。

日本の皇室は神武天皇以来2,000年以上男性の血筋を守ってきた

日本の皇室は伝統的に「父親の父親の父親の…」というふうに男性の血筋をたどって天皇家を存続させてきました。
女性が天皇になったとしても、次の代を弟(など)に譲れば「男系の血筋」は守られます。

しかし、愛子さまは一人っ子なので、次の皇位を悠仁さまに引き継げば男系は守られますが、愛子さまの子どもが継げば「男系」ではなくなることになります。
この部分が問題視されているのです。

さらなる問題点…「女性宮家」の創設

さらに、もう1つ問題があります。
現在の皇室典範では「女性皇族が結婚すると皇室を離れる」というルールがあります。
現天皇の妹である黒田清子さんも、ご結婚と同時に皇室を離れましたよね。
しかし、女性天皇を認めるということは、女性皇族が結婚しても皇室にとどまれるようにするというふうにルールを変更する必要があるわけです。

…ということはつまり、「女性宮家」の創設も検討する必要があるということになり、この「女性宮家」の創設にも多少の問題があるのです。
そもそも「宮家」とは何なのか?といいますと、皇統を継ぐための一種の血のスペア(保険的な役割)なわけです。
徳川将軍を継続させるための徳川御三家(尾張・紀州・水戸徳川家)のようなものですね。

徳川将軍を継続させるための徳川御三家

これが男性の宮家なら保険的な意味もありますが、女性の宮家は果たして保険になるのか?
そもそも「女性宮家」という存在そのものが意味不明という意見もあります。

日本の皇室は「Y染色体」を受け継いできた!

また、皇室典範の第1条「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」には科学的な意味合いもあります。
それは「染色体」です。

中学校の時に「遺伝」について学んだ生物の授業を思い出していただきたいのですが、私たち人間の染色体の本数は23組、46本あります。
この23番目の染色体のことを「性染色体」と呼び、これが「XX」型ならば女の子が生まれ、「XY」型なら男の子が生まれます。
「X染色体」は男性も女性も持っていますが、「Y染色体」は男性しか持っていません。
つまり、「Y染色体」は父親からしか受け継ぐことができない染色体ということです。

「Y染色体」は男性しか持っていない

ところで、日本の皇室は世界で最も長く続いている王朝といわれていますが、これはつまり、日本の天皇家は「Y染色体」を数千年間にわたり受け継いできた血統といえます。

ちなみに、先ほど説明した8名の女性天皇は全て中継ぎ役として天皇になっただけなので、「Y染色体」はしっかり受け継がれています。

今後ますます皇位継承者が少なくなっていく!?

しかし、この問題はどこかでしっかりと解決しなければ、今後ますます皇位継承者が少なくなっていくことが考えられます。

天皇制を形容するときに「万世一系(ばんせいいっけい)」という言葉がよく使われますが、これは永遠に1つの系統が続いているという意味です。
つまり、「男系」です。

万世一系(ばんせいいっけい)永久に同一の血統・血筋が続くこと。特に、日本の皇室・皇統をさす。「万世」は、永遠に。「一系」は、一筋の血統の意。

現在皇室を構成している皇族の方々は19人います。
そのうち14人が女性で、男性は5人だけです。
その5名のうち若い世代の継承権者は、秋篠宮さまの長男である悠仁さまだけです。

なぜこれほど男性が少ないのか?といいますと、その理由の1つとして、男性の民間人は皇族になれないことが挙げられます。
ご存知の通り、今まで皇室には多くの女性民間人を迎え入れてきました。
明治天皇以降の后はいずれも民間出身です。
このように、女性の民間人は皇族になることができますが、男性の民間人が皇族になることはありません。

そこで、仮に皇室典範で「女性天皇」を認めたとしても、「女系天皇」が認められなければ、女性天皇の子供は女系なので、次の天皇にはなれません。
結局、男性皇族が男性を生まない限り、この問題はずっと解決されないのです。

江戸時代以前は正妻以外の子供にも皇位継承資格を認めていた

また、江戸時代以前は正妻以外の女性(いわゆる側室)から生まれた子供にも皇位継承資格を認めていましたが、明治時代に「正妻の子供のみ」とルール化されました。
「側室なんて今の時代に合わないよ」と感じるかもしれませんが、「男系」にこだわり続けるのであれば「正妻の子供のみ」というルールはいささか厳しいような気もします。

事実、皇室においても幕府の将軍家においても、側室は当たり前の制度でした。
これくらい幅を持たせなければ維持できないほど「万世一系」は難しいということなのです。

明治天皇には複数の側室がいた 側室の1人・園祥子さん

とはいえ、「男系」にこだわって皇室が存続できないければ、意味がありません。

そこで、2005年、当時の小泉純一郎首相の時に「女系天皇を認める報告書」がまとめられたことがありましたが、その直後に秋篠宮妃紀子さまがご懐妊し、悠仁さまが誕生されたため、論議は先送りになり、今に至っています。

まとめ(超個人的見解)

「なぜ、男系の男子でなければならないのか?そもそもその部分がおかしい!」と主張する方もいますが、この主張はナンセンスですね。
例えば、目の前に世界最古のツボがあるとします。
見た目はボロボロで、物質的には何の価値もありません。
でも、「世界最古のツボ」ということに大きな価値があります。

日本の皇室も同じです。
「男系男子」が良い・悪いという問題ではなく、2,000年以上「男系男子」という歴史を受け継いできたことに大きな価値がありますから、これをいかに継続するかで悩んでいるわけです。

「この問題は男女差別的な問題だ」と主張する方もいますが、この主張もナンセンスです。
これは、いかに皇室の血を受け継ぐかという議論であって、男女差別や人種差別とは全く次元が異なる問題だからです。

また、日本人の優しい気質から最近は「女系天皇を認めればいいのでは?」という声が多いようですが、数百年後の私たちの子孫から「なぜ、あの時に男系の血を断絶してしまったの?」とブーイングが起こる可能性もあります。
なにせ、今まで2,000年以上続いてきたものですからね。

なぜ、あの時に男系の血を断絶してしまったの?

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